infection院内感染対策

7基本セットの滅菌システムと使用ルール

基本セットの変遷

村井歯科での基本セットの変遷を示した4枚の写真です。院内の消毒レベルが上がっていくに従って基本セットの在り方が大きく変ってきました。

  • ①開業した当初(昭和47年)の基本セットです。このような基本セットの保管場所がユニットについていたわけですからメーカー側(モリタ)もこれでいいと考えていたのでしょう。消毒方法は薬液消毒から、しだいに乾熱滅菌そしてオートクレーブへと代わっていきましたが

  • ②アメリカでのキンバリー事件に端を発したエイズ問題(1991年頃)が日本でも起こり、慌てて院内感染予防対策を始めた1992年頃の基本セットの状態です。この頃まだトレーを無菌的に取り扱う考え方はありませんでした。

  • ③トレーを無菌的に取り扱わなければ、滅菌システムが台無しになってしまうことに気がつき始め、一年程でトレーも滅菌バッグに入るようになりました。

  • ④暫くして、補助者用のトレーとピンセット(滅菌したものの取り出しと保管)も必要になり、術者用と補助者用が一緒にパッキングされるようになりました。これは現在まで続いているシステムです。

基本セット滅菌の流れ

  • ①使用済みの器具類は直接手指を触れないように超音波洗浄容器の中に入れる。

  • ②超音波洗浄器のなかに洗浄剤を入れ、30分間超音波洗浄する。

  • ③市販の食器洗い器で30分間洗浄をする。

  • ④タオル等で水分を拭きとり器具類を乾燥させ、種類別に整理する。

  • ⑤器具類に合わせた巾の滅菌パックとシーラーを使用してパッキングする。

  • ⑥その後オートクレーブ滅菌をする。現在121℃で25分の滅菌パターンを実施している。

基本セットの使用ルール

術者用の基本セットと補助者用の基本セットが一緒にパッキングされています。

術者用基本セット

 ピンセット、ミラー、探針、スリーウェイシリンジチップ

補助者用基本セット

 ピンセット、バキュームチップ
となっています。これ以外に必要な器具があれば基本セットトレー上に補充することになります。

補助者用のピンセットとトレーは滅菌されたものだけを取り扱うルールになっており、患者さんの口腔内への使用はできないことになっています。

術者用のピンセットは口腔内使用時、このように先端部分が汚染されることが多いです。このピンセットで綿球を摘み、薬液瓶に入れてしまえば、薬液瓶全体を汚染させてしまうことになります。

補助者用の基本セットは滅菌されたガーゼ、綿球などの取り出しあるいは一時的な保管に使用します。必要であればこのピンセットを使用して綿球を薬液瓶内に浸し、それを術者用のトレーに置きます。術者はその薬液綿球を術者用のピンセットで患者さんに使用します。
歯内療法時のファイルや補充用バーの取り出しなど、滅菌済みの器具類の取り扱いは全てこのピンセットで行うことになります。

基本セットの使用ルール(両頭器具用トレー)

両頭のスケーラやキュレットなどを使用したい時は、基本セット以外にもう一枚トレーを補充します。歯科衛生士がルートプレーニングをする時は必ずこのような状態で治療を進めていくことになります。理由については5.グローブ着用とグローブ着用手指の順守事項(d.トレー上の順守事項)に詳しく記述してありますので参照して下さい。

基本セットの使用ルール(補綴用トレー)

両頭器具も一本程度なら両頭器具パットを使用して基本セット内に収めて使用しています(写真下)。この場合はグリーンのエリア内に手指を触れないように、治療を進めていくことになります。
しかし、困ってしまうのは補綴関係の治療です(写真上)。Crや義歯などは直接手で保持して作業を進めていかなければならないからです。このトレーだけはしかたなく全域、手指が触れても良いことになっていますが、裏返せばこのトレー上だけは非接触領域などのルールで交叉感染を防止できないことになります。
出血を伴う補綴物の調整はトレー上のルールでは対応できないため、血液に触れてしまったら頻繁なグローブ交換で対応することになります。