infection院内感染対策

c.環境表面への血液汚染の対応

環境表面への血液汚染の対応1

環境表面への血液汚染は厄介です。器具類のように滅菌に廻すことができないからです。環境表面への血液等の汚染防止には図の3つの対応が重要です。
①グローブの交換:血液に触れた時点で即座に交換します。そのまま使用することによってユニットやキャビネットを汚染させてしまう可能性があるからです。
②使用器具類の滅菌:患者さんの口腔内に入る器具類はすべて使用後滅菌します。
③飛沫汚染の防止:診療中、特に切削時、あるいは超音波器具類の使用時、また電気メス、レーザ使用時は飛沫汚染防止の為に口腔内バキューム、口腔外バキューム等を使用し極力拡散を防ぐようにします。又、術者、補助者の手指汚染を防ぐ為に排除用ミラーを使用します。器具類の使用ルールに関しては5.グローブの着用とグローブ着用手指の順守事項に詳しく記載してありますので参照してください。

気をつけていても、血液の付いたガーゼを床に落としたり、抜去歯をユニットの上に落としたりすることが時に起こります。このように床や壁などのハウスキーピング表面が血液や生体物質に汚染された時はそれらを注意深く除去し表面消毒することが必要です。アメリカCDCは環境表面の消毒に高水準の消毒薬を認めていません。ガスの発生などで医療従事者の健康への影響が考えられるからです。
CDCは結核菌殺菌性のある中水準の病院消毒薬、あるいは家庭用塩素漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)などの使用も簡便で有効的な方法としています。次亜塩素酸ナトリウムは広域スペクトラムの有効な殺菌薬であり環境表面の汚れの程度により5000ppm~500ppmの濃度のものを使用するとなっています。

環境表面への血液汚染の対応2

アメリカCDCは汚れの程度に応じて5000ppm~500ppm濃度の溶液を使用するとなっています。又日本歯科医学会は歯科診療ガイドラインの中で血液や体液の消毒には500ppm~1000ppm濃度の溶液、そしてこびりついた血液や体液には5000ppm濃度の溶液を使用するとなっています。歯科診療所では歯内療法時に使用している次亜塩素酸ナトリウムがありますので、それを使用するのが便利です。次亜塩素酸ナトリウム10%溶液は100000ppにあたりますので注射用水等で20倍希釈すれば5000ppm溶液が得られます。次亜塩素酸ナトリウムは色素脱色、金属腐食などを起こすので繰り返しの使用には注意が必要です。それらが心配される場合はその他の中水準の病院消毒薬(19.診療室内の環境消毒の「環境消毒薬剤の選択」を参照)を使用することになります。

左上:環境表面を抜去歯などの血液や生体感染物質で汚染させた場合は、まず抜去歯をピンセットで除去し感染性廃棄物として廃棄する。
右上:ティッシュペーパなどで吸い取るように血液を除去する、この時ふき取るようにするなど汚染面を広げないように注意する。
左下:5000ppm(0.5%濃度)の次亜塩素酸ナトリウムで消毒する。歯内療法で使用する10%次亜塩素酸ナトリウムを20倍希釈して使用している。
右下:消毒後乾燥させる。金属の腐食や脱色が心配な場合は消毒後、過酸化水素で中和することもある。