infection院内感染対策

a.臨床的接触表面

臨床的接触表面への対応

やっかいな臨床的接触表面への具体的な対応に入っていきます。特に汚染の拡散の危険性が高いチェアーサイドを例にとって話を進めていきます。この周辺の環境をすっぱり3つのグループに分けてしまうのです。1つは滅菌されたもの、2つ目は血液等に汚染されたもの(出血のある口腔内に触れてしまったグローブ等もこれに含まれます)そして3つ目はそれ以外のもの、これには医療従事者の手を含めて診療中に触れてしまう可能性のあるものすべて含まれます。
そしてこれらが、診療中、接触汚染という観点から混じりあわないように、医療従事者の汚染拡散防止のための手の動きの訓練をし、考え方と手技のレベルアップを目指していくのです。

考え方は次のようにしていきます。
未滅菌グローブを着用した手指では滅菌されたものには触れることができません。それでは診療ができないではないかと考えてしまいますが、そうではありません、滅菌された器具類で組織を穿通する可能性のある部分には手で触れないようにするということです。その手技に関しては魚の骨のバナー(院内感染対策)の5.グローブの着用とグローブ着用手指の順守事項 a~dに詳しく記述してあります。
一方で血液汚染された器具類やガーゼ、あるいは口腔内には極力手を触れないように診療を進めていきます、触れたらグローブを交換すれば良いとする考え方は正しくありません。極力触れないように診療を進めていける手技を身に付けることが重要です。それでももし血液に触れてしまったら、その時は躊躇することなくグローブを交換することになります。
この手技が確立することによって、初めて診療室内の臨床的接触表面をアルコールと塩化ベンザルコニウムの合剤で消毒することが許されると考えているのです。

臨床的接触表面の消毒方法

臨床的接触表面の消毒剤はアルコールと4級アンモニウム塩化合物の合剤を自家製で調剤して使用しています。
使用する消毒用エタノールは日本医薬品集に載っているメーカーならどれでもいいと考えています。
使用量が多いので16L缶を注文して図のような容器に小分けして使用しています。消毒用エタノール3000ccに対して10%オスバン溶液を60mlを加えます。その結果、オスバン0.2%濃度の消毒用エタノール溶液ができるので、それを使用しています。
その溶液を図右にあるような噴霧器に入れ、必要数用意し各ユニット、消毒エリア等に配置しておきます。

実際に使用する時は右上にあるように、噴霧器と専用のふき取り布と併用しながら行います。診療中に触れたと思われる所を重点的に、噴霧器でふき取り布を湿らせながら消毒を行っていきます(左下)。臨床的接触表面の代表的なものを図中に表示してありますので参考にしてください。これらのアルコール消毒レベルの簡単な消毒が許されるのは、次に述べるグローブ着用手指の消毒レベルが維持できていることが前提になるのでくれぐれも注意してください。

臨床的接触表面への汚染を考えると、患者さん毎のグローブの交換では十分ではないことは理解いただいたでしょう。同じ患者さんの治療中でも血液や感染性生体物質に触れた手指をアルコール消毒して再度、治療に復帰することはできません。グローブを交換することになります。診療中、同一患者さんでグローブを交換するまでもない時でも、極力その都度洗剤による手洗いとアルコール系消毒薬による消毒を励行するようにします。接触汚染のほぼすべての元凶は歯科医療従事者の手指です。これをいかに清潔に保てるかが臨床的接触表面をどれだけ清潔に保てるかを決定してしまうのです。