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17X線撮影時の消毒と注意事項

X線撮影時の消毒と注意事項

現在、村井歯科で使用されている3種類の画像診断の撮影風景です。撮影時に口腔内に手指や器具類を挿入するかどうかが対策の大きな目安になります。例えば日立製のCT機器は撮影時には直接口腔内に触れることなく撮影が可能なため特別に消毒に気を使う必要はなく撮影後チンレスト等の簡単な清拭岳で問題がないと考えています。しかしパノラマ撮影時には口腔内に入るバイトピースの滅菌や位置決めの時に必要な口唇の排除のための排除用ミラーが必要になります。一番やっかいなのはデンタルX線撮影です。撮影器材そのものが口腔内に入ることや、撮影枚数が多いこと、そして撮影頻度が多いことなどがネックになるからです。これらの撮影時、その都度撮影装置にラップをかぶせたり、厳重な消毒をするというのは現実的ではありません。これらに対する基本的な考え方は口腔内に直接触れることなく撮影する、そのための手技を整理し習得することにつきると考えているのです。

パノラマX線撮影時の注意事項

パノラマ撮影時の状況です。左上の画像の撮影機器の上にのっているのがパノラマ撮影時の基本セットです。滅菌バッグの中にはバイトピースとミラーが入っていて、オートクレーブ滅菌されています。撮影時の注意事項はバイトピースを咬ませた後、その位置やレーザー光の位置確認などする時に口唇排除や口腔内確認などに手指を直接使うことなく、排除用のミラーを使用して行ないます(右下画像)。そのことによって口腔内に直接触れることなく撮影が可能になります。排除用のミラーはガラス面が傷ついたりして廃棄するものを取っておいて利用すれば十分用が足ります。
この撮影の原則を守れば、パノラマだけでなくデンタル撮影も術者のスイッチ類の操作が自由になります。またラッピングやその都度の消毒の必要も減り、非常にシンプルなシステム構築が可能になります。

デンタルX線の撮影システム

デンタルX線撮影時の消毒と注意事項について述べていくことにします。デンタル撮影時には左上の画像のように術者と補助のペアで撮影することが基本になっています、位置決めと撮影を術者が行ない、フイルム交換と現像処理を補助が行ないます。5年前全てをデジタルに切り替えたのですが、デンタル画像の悪さをどうしても受け入れることができず、アナログに戻した経緯があります。ここでは現在行なっているフイルムを使用しての消毒システムを紹介していますが、基本的な注意はほとんど一緒と考えています。
撮影の基本は手指で口腔内を直接触れないように、ミラーを使用して排除、位置確認を行なうことです(右下画像)。原則を守れば患者さんの口腔内に触れることなく撮影が可能なため、画像のように根管充填後にグローブを外し、手洗いをした手指で撮影することも問題ないと考えています。しかしデンタル撮影にはパノラマ撮影には無いいくつかの工夫が必要になります。

デンタルX線撮影中の遵守事項

デンタル撮影時には撮影条件によって2種類の基本セットが用意されているので使い分けて使用しています。
A.同じインジケーターでフイルム交換なしに撮影できる時、基本セットはトレーとミラーだけです。全ての操作はこのトレー上で行ない汚染を拡散しないこととミラー排除が基本になっています。
B.インジケータのフイルム交換が必要な時、例えば右下臼歯部と左上臼歯部、あるいは上顎前歯と下顎前歯の同時期撮影など同じインジケータを使用して撮影したい時にはフイルム交換が必要になります。基本セットはトレーとミラーそしてフイルム交換に必要なピンセットで構成されています。

手技は難しいものではありません、基本的にペアになっている補助がフイルム交換を行ないます。撮影済みのフイルムをピンセットで外しトレーの前方部にフイルムを置きます。インジケーターは口腔内に挿入する部分を触れないように作業を進めていくことが重要です。

新しいフイルムはピンセットを使用すること無く手でセットします。未撮影のフイルムはトレーの後方部に置くようにし、撮影済みのフイルムはトレーの前方部に置かれています。トレー使用の大原則、前方部が不潔域で後方部が清潔域のルールを守るようにします。

デンタルX線撮影後の器材の取扱い

撮影済みのインジケーターとフイルムはトレーにのせたまま消毒エリアにもっていきます。
左上:トレー上にあるピンセットあるいは消毒エリアに備え付けてあるピンセットでインジケーターからフイルムを外します。
右上:インジケータのバイトブロックもピンセットで除去し廃棄します。
左下:ピンセットを利用してインジケータの水洗を細部まで行ないます。
右下:同様に撮影済みフィルムの水洗を行ないます。

左上:水洗後アルコールと4塩化化合物の合剤で消毒します。
右上:消毒後乾燥します。
左下:現像処理を行ないます。
右下:フイルムカバーと鉛は医療廃棄物として分別し廃棄します。

関連で、インジケーターの消毒方法にも触れておきます。インジケーターは大きさとそのスペースをとる形態からEOG滅菌やオートクレーブ滅菌に適応させづらい現状があります。
現在、村井歯科ではグルタラール製剤での消毒で対応しています。
左上:水洗後、食器洗い機で洗剤と80℃の熱湯での洗浄を行ないます。
右上:グルタラール製剤で1時間以上消毒します。
左下:消毒後、水洗して、食器乾燥器で乾燥させます。
右下:画像診断室にある密閉された保管庫に保管します。

出血がある時の対応

口腔内から出血のある場合は必ずこのようなフイルムカバーをして撮影を行います。撮影後はひも状の長い端を開き中のフイルムを取り出します。バッグに付着した血液等に触れないように注意します。
このフイルムカバーは商品名がサリバックとしてFEEDから販売されています。400枚を2000円前後で購入することができます。カタログによるとX線フィルム用、イメージングプレート用、CCDセンサー用などが販売されているようです。
全ての撮影にこれを使用すれば、さらに確実な感染予防対策が可能になるでしょう。
現在は画像の質の関係からX線フィルムに戻ってしまいましたが、以前、イメージングプレートを使用していたときは全ての撮影をこのフィルムカバーを使用して撮影していました。