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10歯内療法器具類の滅菌システムと使用ルール

歯内療法器具類の滅菌

私たちが行ったアンケート調査結果から、まだかなりの歯科医療機関がリーマー、ファイルを薬液消毒で済ませていることが分かっています。
使用している代表的な薬剤が左上に示してあります。商品名を一般名で郡に分けたものがA,B,Cなどのアルファベットです。各消毒剤の対象微生物への薬効を見て下さい。
使用薬剤の多くが十分な薬効を持っていない事が分かります。
次亜塩素酸ソーダは金属類の腐食を起こし、グルタルアルデヒドは室内に有害な蒸発ガスが出るなどの理由から使用を避けなければなりません。
リーマーやファイルなどの歯内療法器具類は歯髄や歯周組織などの組織を穿通することから、必ずオートクレーブ滅菌しなければなりません。

歯内療法器具カセット

歯内療法器具類はこのような市販のプラスチックカセットにセットを組んで使用しています。カセットごとに滅菌バッグにパッキングされオートクレーブ滅菌されています。
セットの中身は、

  1. ファイルスタンド×2
  2. シャーレ×2
  3. オキシドール用シリンジ
  4. ガラス練版
  5. 根管充填器
  6. スプレダー

になっています。使用済みのファイルは補助者がアルコール綿で精拭しながら反対のファイルスタンドに対象的に移していきます。ファイルスタンドが2つあるのは、治療中未使用のものと使用済みのファイルを混同させないようにするためと、治療終了後は消毒係の人がもとの位置に戻し易いようにするために考えられたものです。
シャーレは次亜塩素酸(青いテープ)とオキシドール用に用意されたものです。次亜塩素酸用のプラスチックシリンジはこのセットとは別に用意され基本セットの上に用意されます。
歯内療法器具カセットは歯科医師1人の場合は6セット用意しておけば足りなくなるようなことはありません。

ファイルの構成

リーマーは使用せずKファイルとHファイルでセットが構成されています。
Kファイルが3本ずつになっているのは、大臼歯の根管数に対応するためです。

  1. Kファイル08~120号×各3本
  2. Kファイル130号×1本 Kファイル140号×1本
  3. Hファイル25号、30号、40号、60号、70号×各1本
  4. レンツロ25号、40号×各1本
  5. エンジンリーマー25号×1本

応急処置用ファイルセット

急患の患者さんに一々歯内療法用カセットを出していては滅菌量が増えるばかりです。
痛みを取るだけの治療なら、数本のファイルセットがあれば十分です。

  1. Kファイル08、10、15、25号×各1本
  2. Hファイル25、40号×各1本

のセットを滅菌バッグにパッキングして保管しておけば、いつでも急患に対応することができます。

歯内療法器具カセット滅菌の流れ

  • ①治療が終了したら補助者が他の器具と一緒に消毒コーナーに片付けます。油断せず、ピンセットを使い使用済みの器具類には直接手を触れないように注意します。

  • ②右のファイルスタンドには未使用のファイル等が残っています。左のファイルスタンドには使用済みのファイル等が収められています。左右のファイルは全く同じ位置関係なっています。

  • ③消毒係の人はアルコール綿で精拭しながら、ファイルの曲がりや捩れ等をチェックしながら、右のファイルスタンドに戻していきます。

  • ④基本スタイルに戻った歯内療法器具カセット。

  • ⑤他の器具類とのタイミングを見計らって超音波洗浄します。

  • ⑥超音波洗浄後よく水洗します。

  • ⑦カセットはこのようにかさばるため1日の消毒業務の一番最後に乾燥させることが多い。

  • ⑧滅菌バッグにパッキングする。

  • ⑨オートクレーブ滅菌する。

ガッタパーチャーとペーパポイントの滅菌

ガッタパーチャーの主ポイントは号数別に1本ずつパッキングします、機関銃の弾のように保管しておきます。使用する時はその都度ハサミで切っています。アクセサリーポイントは3本ずつパッキングして保管してあります。
ペーパーポイントは細(S)、中(M)、太(L)に分けて3本ずつパッキングして保管してあります。
これらはオートクレーブが使用できないので、ある程度まとめて40℃で6時間のEOG滅菌(b.EOGのページを参考にしてください)をしておきます。

歯内療法器具の使用ルール

  • ①滅菌済みの歯内療法カセット。

  • ②滅菌されたファイルの取り出しは必ず補助者用のトレーにある滅菌済みピンセットを使用し、手指では行なわないようにする。

  • ③補助者は患者さんの胸の上に置かれた滅菌済みのガーゼのうえに術者が取り易いように置くファイルを置く。

  • ④術者はガーゼやファイルの刃部に手指を触れないようにファイルを把持し処置を進めていく。

  • ⑤使用済みのファイルは補助者のアルコール綿の上に返す、術者は滅菌ガーゼの上に置かれた次のファイルを把持し処置を進めていく(繰り返し)。

  • ⑥補助者は使用済みのファイルをアルコール綿で清拭する。このように未使用のファイルはピンセットで取り扱い、使用済みのファイルは刃部に触れないように手指で取り扱うルールになっている。

  • ⑦清拭の終わったファイルはもう一方のファイルスタンドに同じ位置関係になるように収めていく。

  • ⑧根管充填時には必要な号数と本数のガッタパーチャーポイントを用意する。ペーパーポイントも同じ太さのものが3本ずつ滅菌バッグにパッキングされているのでS,M,Lと太さを指定して必要量用意。

動画(歯内療法)

歯内療法(抜髄・根充)時の様子を動画にしてみました。

  1. 局所麻酔注射筒の取り扱い
  2. バーの取り扱い
  3. ファイル類の取り扱い
  4. ペーパーポイント・ガッターパーチャーポイントの取り扱い

などを注意して見て下さい。動画では器具の取り扱いの流れを見ていただき、細部はそれぞれの項で確認してください。