infection院内感染対策

c.治療中の順守項目

村井歯科で1日に消費されたグローブです(上)。1日にグローブ50枚入りのケースが2箱必要なことになります。
これらは1日の患者数が約30名、歯科医師2人とスタッフ5人での消費量です。
下の写真はシリコン印象材によるクラウンの適合試験をしている時のグローブの状態です。
TEKの仮着材の除去が不十分だったため辺縁歯肉の炎症があり、試適するたびにこのように血液に触れてしまいます。
このような状態になったら即座にグローブの交換をします。このまま診療を続けたり、手洗いをしたりして対応することは決してありません。
あまり多いケースではありませんが、このようなケースでは同じ患者さんの処置に3~4回のグローブ交換を強いられることさえあります。
それとは逆に患者さんの口腔内に直接手指を触れることなく処置ができれば、グローブ交換することなく手洗いと薬液消毒で済ませていることもあります。
未滅菌のグローブを使用しながら、滅菌システムを台無しにしないためには、治療中の術者と補助者の「汚染されたものの取り扱い」と「滅菌されたものの取り扱い」いわゆる器具類の使用ルールが最大のポイントになります。

歯科医師(術者)の順守事項

私たちの歯科医院では未滅菌のグローブを着用していることは「グローブ着用の目的」のセクションですでに述べました。
未滅菌のグローブを装着した手指には滅菌システムを崩さないための2つの重要なルールがあります。

  1. 滅菌された器具類の組織を穿通する部分には手を触れないで治療をする
  2. 患者さんの創面あるいは血液に直接手を触れないように治療をする、触れてしまったらすぐグローブを交換する


バーなどは左下の写真のようにピンセットで脱着します。術者の順守事項は次のトレー上の順守事項と合わせて読んでいただくと、理解しやすいと思います。

手術室での手術の映像で、術者が臓器などに直接手で触れて処置している光景を見て、私は「ギクッ」とすることがあります。
そうか、ほぼすべてが無菌的な手術室だし滅菌グローブを着用しているからいいのかと思い直すのです。
しかし未滅菌のグローブを着用した手指ではそうはいかないのです。グローブを着用した手指は滅菌された器具(上のメス)に対しては不潔なもので使用済みの器具(下のメス)に対しては清潔なものと位置付けて診療を進めていくことになります。
スイッチ類やキャビネット類に触れることができる中間的位置にある未滅菌グローブ着用の手指は、滅菌されたメスの青丸の部分と汚染されたメスの赤丸の部分には手を触れないように処置を進めていかなければなりません。
このルールをキュレット、スケーラ、プローブ、ファイルなど組織を穿通してしまう可能性のある器具類すべてに適用させていくのです。

補助者の順守事項

切削器具あるいは超音波スケーラー使用時の基本的な診療スタイル切削器具あるいは超音波スケーラー使用時の基本的な診療スタイルです。術者も補助者も口唇や舌の排除はこのようにミラーを使用して行います。特に補助者は患者さんの口腔内に決して手を触れないようにすることが重要です。いつでも使用できるように滅菌済みの排除用ミラーを何組か用意しておきます。
口腔内バキュームを有効に使用しながら、口外バキュームも併用して可能な限りスプレーを室内に飛散させないようにしていきます。

基本セットの中に、術者用とは別に補助者用のトレーとピンセットが用意されています。補助者は滅菌されたガーゼや綿球あるいはバーの取り出しなどにはこのピンセットを利用して行います。術者用のピンセットはすでに汚染されてしまっているため、滅菌されたものの取り出しには使用できないからです。
このトレーとピンセットは滅菌されたものの取り扱いのみに使用され、汚染されたものは一切取り扱わないルールになっています。

補助者は治療中に動き回らなければならないことが多いため、術者以上にグローブ着用時の手指の汚染に注意しなければなりません。不注意は治療室内への汚染拡散につながってしまうことになります。
使用中のバキュームチップの先端は血液や唾液に汚染されており、チップの向きを変える時には注意が必要です。このようにディスポーザブルのエプロン等を利用して行い、手指を汚染させないようにします。