infection院内感染対策

3滅菌・消毒システムのモニタリング

左の図上の図は3M社が推奨している「3M滅菌保証プログラム」の内容を示したものです。その説明のなかで「各施設で行われる滅菌確認方法の妥当性や、実際にどのように行えばより良い滅菌保証が得られるかの情報が含まれ、各施設での医療材料の滅菌保証管理に最適な内容です。このプログラムの実施により、病院内で滅菌される医療材料の安全性および滅菌確実性を大きく向上させることが可能になります」とあります。これらを全部行っていくのは大変ですが村井歯科でも昔から、外部コントロールとバッグコントロールと記録だけは行われていました。
10年程前、数種類の滅菌器の温度テストをしたのですが、機種によって中心部の温度が100度まで上がらないことがあるなど驚かされた経験があります。正しい滅菌器の選択と管理が非常に重要だとその時思い知らされたのです。
村井歯科にとっても、せっかくの見直しの機会ですので、いままでの方法と今回改善したところも含めて具体的な方法を紹介していきます。

オートクレーブのモニタリング1

機械コントロール

現在使用しているオートクレーブ(サクラ精機)の機械コントロール部です。
現在  圧力:1.12kgf/cm2
    温度:121℃
    時間:残り24分(滅菌時間25分)
を表示しています。普通これで滅菌は大丈夫だろうと考えてしまいます。しかしこれはあくまでも各種の計器がそう示しているだけで「計器が壊れているかもしれないし、表示が正しいとはかぎらない」と考えて、以後のモニタリングを実践していかなければならないようです。

ボウィー・ディックテスト

3M滅菌保証プログラムの中でボウィー・ディックテストとはプレバキュームタイプ滅菌器の残留排除を調べる方法で、米国・欧州では、毎日の日常業務として一般的に行われているオートクレーブのテスト方法だとされています。

テストの方法
  1. 滅菌器を空のまま加熱して1サイクル運転し、蒸気管から空気を抜く
  2. このボウィ・ディックテストパックを余熱した装置内の最も滅菌されにくい場所に水平に置く、通常下段、扉側、排気口の上方
  3. 134℃、3.5分で試験を行う
  4. サイクル終了後、機械的モニターを読む.ボウィ・ディックテストシートの結果を読み、記録する
上の写真

ボウィ・ディックテストパック:テストパックをセットする労力を省きテストパックの不均一性をなくした、ボウィ・ディックテスト用ディスポーザブルテストパック

下の写真

ボウィ・ディックテストパックの中身:ボウィ・ディックテストシート(縞模様のシート)が何重ものペーパー等にはさまれている。テストシートは黄色から黒へと変化する、まんべんなく黒に変化すれば、滅菌器内の残留空気は無いと判断する。

オートクレーブのモニタリング2

外部コントロール

「3M滅菌保証プログラム」によれば「外部コントロール」とは、滅菌工程を通過した医療材料とそうでないものとを一目で識別する方法で、滅菌器取扱者が滅菌物を開封したり滅菌工程管理器録をチェックしなくても、滅菌物が滅菌工程を暴露されたか確認できるものとされています。
写真は現在村井歯科で使用されているインジケーターテープです、このようにディスペンザーにセットして使用しています。

滅菌バッグの外側にインジケータテープをはり付けて滅菌するとオートクレーブではオレンジが黒に変化します(上の写真)。同じテープでもEOG滅菌ではオレンジから緑に変化します(下の写真)。

滅菌ごとに、毎回全ての滅菌バッグにインジケーターテープを貼付けます。滅菌工程中に滅菌されていないのに滅菌されたと間違うことのないようにするためです。器具類を使用する時にはインジケーターテープの色が変わっていることを確認してから器具を取り出しています。

村井歯科では対象物によって滅菌バッグを再使用しているため、その都度インジケータテープを貼付けていかなければなりません。1回使用だけなら滅菌バッグの字の色の変化で確認できます。滅菌バッグは1回使用が理想ですが、出るゴミの量と滅菌バッグ費がネックになっています。

「使用している滅菌テープ」

日油技研工業 オートクレーブ・E.O.ガス両用

オートクレーブでは橙色が黒色に変色する

E.O.ガスでは橙色が緑色に変色する

オートクレーブのモニタリング3

「パックコントロール」

3M社の滅菌保証プログラムの「パックコントロール」のなかで「パックコントロール」には化学的インジケータあるいはインテグレータを使用し、それらをすべてのパックに挿入することにより滅菌工程で使用された滅菌剤(この場合飽和蒸気)が充分パック内に浸透したかどうか判断できるとされています。
そして、作業者の過失(滅菌物の過積載)や機械的不調のため、滅菌器内で起こりえる「部分的な滅菌不良」は次のような場合に起こりやすいとされています。

  • 少量の空気が滅菌器内から抜けなかった場合や、残留空気がパック内部に存在する時
  • パック自体に滅菌物がぎっしり詰められているとき
  • 滅菌パックや滅菌コンテナ等が不適切であるとき、または滅菌物の過積載のとき
  • 滅菌工程において、不十分な滅菌サイクルを選択したとき

3M滅菌保証プログラムでは全ての滅菌パックにインテグレーターを挿入するとなっています。しかし毎回すべての滅菌パックにはとてもできないため、村井歯科では毎回以下の3ヶ所の滅菌パックにインテグレーターを入れてチェックしてきました。

使用しているオートクレーブ用インテグレータストリップスは、
3M社 コンプライ(化学的インテグレータストリップス)
ISO化学的インジケータ規格:クラス5
・すべての滅菌条件に反応して表面窓領域にバーが伸びていく
・一つでも滅菌条件が不十分であれば不合格(REJECT)の領域にバーが止まり、色変化のインジケータカードに比べて確実に読み取れる

オートクレーブの上段の中心部

 毎回滅器状態は良好

オートクレーブ中段の扉付近

 毎回滅器状態は良好

オートクレーブ下段の中心部

 滅菌は出来ているが、滅菌槽内では一番条件が悪い
 毎回同じような結果がでている

記録保存

村井歯科ではバックコントロールの結果をこのように専用のノートに貼付けて保存しています。
必ずインジケータ結果を観察する習慣と滅菌時に毎回パックコントロールを行うというシステムを壊されないようにするために重要な事だと考えています。